2012年7月29日日曜日

2012/07/29 和田浦ツチ鯨解体見学

 昨年の夏の終わり頃に、房総半島の和田浦で鯨の解体を見られることを知りました。南房総自体は何度か遠征していて、千倉では「鯨のタレ」の製造だか販売の会社を見ましたし、道の駅でも見かけました。しかし解体作業自体が見られるとは知らず、これは是非見たいと思いました。しかしツチ鯨漁は毎年6月20日から26頭獲れるまで行われており、だいたいお盆前に捕獲枠が終了する模様。その為、これを知った時は遅かったのです。というわけで、ほぼ一年越しの願望を叶える為、和田浦に遠征してきました。

 外房捕鯨株式会社ブログ

 捕鯨と解体作業を行っている会社のブログですが、ここに当日何頭獲れたか、そして翌日何時から解体を行うか公開されています。その為に解体見学に行くにしても、ブログが公開される前日の夕方くらいにならないと、解体が行われるのかどうかさえわかりません。フットワークの軽い方か、近隣の方以外はちょっと大変です。

 私が遠征したのは7月29日。前日のブログで朝の4時半から解体が行われると告知されていました。お陰で足立区の自宅を出発したのは2時くらい。朝じゃないですね(笑)。館山自動車道をぶっ飛ばし、なんとか4時半に現場到着。作業場の隣は大きな駐車場で、駐車スペースには余裕があります。



 敷地入口からから見る解体場。奥が海です。この写真は撮影が5時半ですので明るいですが、さすがに4時半の時は薄暗かったです。



 隣の駐車場から見る解体場。右側が海で、斜面から鯨をウィンチで引っ張り上げます。駐車場と解体場の間には5m程度間隔があり、見学するにはちょっと遠いのですが、写真を見てわかる様に見学者多数の為、私は駐車場の方から見学しました。



 4時半の模様。既に鯨は引き上げられた後でした。捕鯨は資源管理が必要な為、全長の測定が行われています。周囲の人間から推定すると全長12mくらいはありますね。



 巨大な長刀でヒレに切れ目を入れています。暗いし、作業は素早いしで、写真がボケ気味です。



 手鉤で引っ張りながら、切れ目を拡大して行きます。



 緑のシャツの人が鉤を引っ掛けているのは皮下脂肪ですね。厚みが10cm以上あるなぁ。



 皮と皮下脂肪がだいぶ剥がされました。内蔵も見えます。



 皮と脂肪を剥がした後、やっと背中の肉を剥がします。これも各部に繋がっている部分を長刀で切り裂きながら、今度はウィンチで引っ張って剥がします。



 内蔵を取り除きます。鯨と言うと全身捨てる部位がないと聞きましたが、こちらでは前日捕鯨したもので鮮度が落ちるせいか処分しちゃうみたいです。



 背骨が見えてきました。



 背骨と皮下脂肪を長刀で切り離していきます。背骨に肉が着いていますが、これを剥がしたものを「ハギ肉」と呼び、背中の正肉に比べて割安に販売してくれます。少し筋が多いくらいで、味は同じとのこと。



 もう少しで皮と皮下脂肪が離されます。



 背骨だけになりました。



 背骨も左の方に移動させられ、現場はさっぱり。この時5時20分ですから、わずか50分の作業でした。手際良過ぎ。



 ツチ鯨の頭(^^;。



 料理店に卸される正肉が切り分けられて行きますが、大きさが凄いです。一塊で30kg以上ありそうですね。



 奥では女性が内蔵を調べています。手前の女性は歯を調べて年齢を推定しているそうです。



 各部位に分離されたものが手際良く処理されて行きます。



 右奥のベルトコンベアーに載せて更に小さくカットされていきますが、それまでは氷漬けで雑然としています。それにしても床が板ですが、血で真っ赤です。解体中はかなり血が流れていて、生き物が殺されているんだなぁと実感します。



 カットされた肉はポリバケツに無造作に突っ込まれ、料理店や鯨肉加工会社に買われて行きました。



 近くで見るとあまり美味しそうには見えない(^^;。



 これは心臓。飲食店用で一般売りはしないとのことですが、押しの強いおばちゃんに負けて少し配布していました。

 本当は南房総をポタリングする予定でしたが、鯨肉を買ってしまいましたのでそのまま帰宅しました。まさに鯨肉を買いに行っただけです(笑)。



 ちょっと記憶が曖昧になってしまいましたが、正肉が1kg3500円、ハギ肉が2kgで3400円くらいだったかな。家に帰って量ったらハギ肉は2.7kg入っていました。スーパーのビニール袋は持参物。発泡スチロールの箱は200円だか300円だかで売っていました。氷は無料。



 購入した鯨肉。600g程度の塊を適当に量って売る為、公称2kgと言っても実際は2.7kgになったりするわけです。甥っ子にあげようと、1.3kgくらい分けました。



 キッチンシンクは殺人事件が行われたかの様に血だらけになりました(笑)。もの凄い血の量…



 これはしぐれ煮。焼肉のタレで焼いたり、ステーキにして1kgくらい二日で食べましたが、味はいまいちかなぁ。ステーキや焼肉はあまり血抜きしなかったせいかも。でも魚ではなく明らかに獣を食べているという実感はあります。最後にしぐれ煮にしましたが、これは本当に美味。二度茹でてたっぷり血抜きしましたしね。竜田揚げも美味しいらしいです。販売所では調理方法のコピーを配っていましたので、何も知らなくても大丈夫ですよ。

 自分でも少し動画を撮影したのですが、Youtubeに見事な動画がありましたので以下にご紹介します。8分と長いですが、かなり近くで撮影されていますので実際の作業がよくわかります。

 Dismantling of the whale 鯨の解体

 解体作業場は和田浦漁港に行けばすぐにわかります。Google Mapsだとここです。

 捕鯨自体に賛否両論ありますが、牛も鯨も生き物を殺していることには変わりありません。そして人が生きてきたのは動物のタンパク質を摂ってきたからです。危険を犯して漁をする以上、ツチ鯨も当地に於いて貴重なタンパク源だったことは確かでしょう。綺麗事ではなく、それは事実。これからどうするかは別問題ですが、人が何を食べて生きてきたのかを知ること、そして命をいただくことの大変さと大切さを知るには、とても貴重な見学の機会でした。

 参考サイト
  千葉の愛しきB級スポット達 外房捕鯨株式会社