2012年3月8日木曜日

Lou Donaldson@Blue Note Tokyo

[日時]2012/03/08(木) 19:00開演
[会場]ブルーノート東京
[料金]¥8,400
[時間]1時間15分
[出演者]
 Lou Donaldson [ルー・ドナルドソン] (sax)
 Akiko Tsuruga [敦賀明子] (Hammond B3 organ)
 Randy Johonston [ランディ・ジョンストン] (g)
 Fukushi Tainaka [田井中福司] (ds)

[曲目]
 01.BLUES WALK
 02.WEE
 03.WHAT A WONDERFUL WORLD
 04.FINE AND DANDY
 05.WHISKEY DRINKIN' WOMAN
 06.ALLIGATOR BOGALOO
 07.BYE BYE BLACKBIRD
 08.CHEROKEE
 09.GRAVY TRAIN

 ブルーノート該当ページ

 2009年9月6日の東京JAZZ 2009にルー・ドナルドソンを見に行きました。82歳のルーがいつまで来日できるかわからないですし、最後の日本公演と思って行ったのです。演奏内容やエンターテイメント性が高く、その若々しさに驚いたものです。そのルーが今回85歳にして来日。この調子では私が先に逝っちゃいそうです(笑)。しかも今回はブルーノートというクラブ出演で、見ないわけにはいかないでしょう。

 さてそのステージですが、意外にお客さんが入っていない… 平日ということもありますが、定員の六割くらいですかねぇ。サイド席はだいぶ空席になっていた様な。

 例によって単独参加なので男性の親子と相席になりました。親子が「東京Jazzの時と同じメンバーだ」とかなんとか話し始めたので、「3年前のヤツ、行かれたんですか? 私も行ったんですが」と話しかけると、親子は当然のことながら、親子の向こう側に座った男性客まで「私も行きましたよ」と会話に参加。見ず知らずの者同士で盛り上がりましたが、今夜はそんなディープな客ばかりか(笑)。若い女性客が全然いないのもそのせいね(^^;。

 ルーは素晴らしかったです。85歳とは思えな…いや、思えるな(笑)。年齢を重ねたとぼけた味がなんとも言えない。おちゃめとしか言いようがない。サックスの方は厳密に言えば怪しい部分もありましたが、渋いブルースからビバップまでバリバリ吹けるのが凄いです。途中ドラムソロの曲で舞台を降りましたが(ドラマー以外全員降りた)、それ以外はずっと舞台で立ちっぱなし。座って休むことがないのです。鍛え方が半端ないです。

 ギターも良かったですが、オルガン大好きな私は敦賀明子に見蕩れました。ハモンドオルガンは「泥臭い」と言うとなんですが、ブルージーで大好きです。ソロはもちろんバックに回っても良い。ピアノと違って柔らかな音色は安心します。二列目に座っていたので、ドレスの下から覗く御御足も堪能しました(おい)。いや、いやらしい意味ではなく、ハモンドオルガンなんで足鍵盤とエクスプレッションペダルを両足で操作するのですが、その足捌きが素敵だな、と(笑)。

 というわけでビバップからファンクまで、ジャズの歴史を堪能しました。うーん、お金があればもう1セット見たかったです…


 以下は曲ごとの紹介と感想を。

01.BLUES WALK
 ハードバップからブルース重視に移行しつつある時期の作品。如何にもブルースな哀愁ある泣きのサックスが気持ち良いです。

02.WEE
 ビバップの代表曲。複雑なテーマから、ルーは快速アドリブで一気にビバップの熱狂へ。当時のジャズクラブの熱気が思われます。

03.WHAT A WONDERFUL WORLD
 ジャズ界で偉大な人は誰? 俺じゃないよ。てな感じでルイ・アームストロングのこの曲を浪々と。熱狂のビバップの後だけに心に染み入る優しさ。最後はルイのだみ声を真似て歌い(笑)、拍手喝采。エンターテイナーですなぁ。

04.FINE AND DANDY
 1930年代のブロードウェイミュージカルの楽曲で、ジャズのスタンダード。私はチャーリー・パーカーとアート・テイタムの演奏しか知らないですが。ドラムをフューチャーし、演奏の途中でドラマー以外メンバー一時退席。

05.WHISKEY DRINKIN' WOMAN
 渋いサックスから始まるも、すぐにしわがれた声の歌へ。飲んだくれ女に惚れた男の泣き笑いの歌詞が素晴らしい。三年前の東京国際フォーラムでも聴きましたが、なんとも言えない味があります。それにアルトを小脇に抱えて歌う姿のなんと様になること!! 30代くらいの若造(笑)がやったら『格好つけんな』と言われちゃいますけどね。
 ジャズバンドなんてどんな場所に呼ばれるかわからないわけで、聴衆を引きつけ演奏に集中させるには芸が必要。これはそんな芸でしょう。飲んだくれ女に惚れた男の哀愁ぶりの泣き笑いで、観客はルーの味方になってしまう。中高生にもわかる様な簡単な英語歌詞なのもポイントで、これなら英語圏でなくても通じます。最後にYoutubeの動画と日本語の歌詞を転載するので見て欲しいです。

06.ALLIGATOR BOGALOO
 ヒットチャートにも入ったルーの代表曲。オルガンソロが超絶格好良い。土臭いオルガン最高!! ルーがオルガンのバックで淡々と吹くのもまた渋いんです。

07.BYE BYE BLACKBIRD
 幸せの青い鳥ならぬ不運の黒い鳥さんさようならという、ちょっと愛らしい曲調。マイルス・デイビスの演奏で有名ですが、ミディアムテンポで余裕あるルーの演奏も心地良いものです。

08.CHEROKEE
 1938年作曲のスタンダード。如何にもバップという、テーマからアドリブへの急転回が格好良いです。

09.GRAVY TRAIN
 1961年ブルーノートから発売された同名アルバムからのタイトル曲。「GRAVY TRAIN」は「ぼろもうけの口」の意味。それを知ると、軽快な曲調も理解できます(笑)。


 上で記した「ウィスキーを飲む女」の動画と日本語訳転載。堪能してください(笑)。「ウィスキーをコーヒーに入れちゃうし、紅茶にだって、挙げ句にウィスキーにも入れちゃうんだ」という下りのウィットは日本人の感覚にはないですね。

 Lou Donaldson Dr. Lonnie Smith: Whiskey Drinking Woman

◇ウィスキーを飲む女

 彼女はウイスキーを飲む女 
 いつでもウイスキーを飲んでいる
 ストレートで、チェイサー無し

 そう、彼女はウイスキーを飲む女
 いつでもウイスキーを飲んでいる
 フォアローゼスがお気に入り
 そんな彼女が好きなのさ
 だって彼女はオレの女なんだから

 毎朝ウイスキー
 毎晩ウイスキー
 ベッドの中でも、ケンカしているときも

 彼女はウイスキーを飲む女
 いつでもウイスキーを飲んでいる
 そんな彼女が好きなのさ
 だって彼女はオレの女なんだから  

 結婚式の日
 彼女は白いドレス
 神父様が来たときに
 オレは言ったんだ「そのボトルを隠さなきゃ」
 彼女はウイスキーを飲む女
 ウイスキーでそんなに飲んでいたことがあるかい?
 けれど彼女が好きなのさ
 だって彼女はオレの女なんだから  

 コーンフレークもウイスキー入り
 ビールだってウイスキー入り
 どんなに強い香水だって彼女は満足できない
 だからウイスキーを手と耳につける  

 彼女はウイスキーを飲む女
 いつでもウイスキーを飲んでいる
 けれどそんな彼女が好きなのさ
 だって彼女はオレの女なんだから  

 ウイスキー入りのコーヒー
 ウイスキー入りの紅茶
 ウイスキーにもウイスキー入り
 残りのウイスキーでオレを漬け込んじまう

 彼女はウイスキーを飲む女
 いつでもウイスキーを飲んでいる
 けれどそんな彼女が好きなのさ
 だって彼女はオレの女なんだから



Lou Donaldson ルードナルドソン / Alligator Bogaloo 【CD】